「ライターで稼げるようになればきっと今よりも幸せになれるはず」

あなたもこんなことを願いながら、今も自宅のデスクで必死にMacBookを開いて仕事をしているのではないだろうか。しかし、それは幻想だ。

稼げば幸せになると思ってライターを頑張っているのであれば、その考えはいますぐ排除した方が良い。というか、稼いだからってあなたは何も変わらない。むしろ「昔よりも幸福度が下がった」という人も珍しくない。

僕自身、2021年以降売上が100万円を超えるようになり、利益も200万円は安定するようになった。多い時は、粗利ベースで300万円台に乗る時もある。もちろん、そんな僕は今幸せだ。間違いなくそう言い切れる。

しかし、「じゃあ藤井さん、月収が30万円だった頃と比べて幸福度はどう変わりましたか?」と聞かれると、「今の方が幸福度が高い」と即答はできない。正直、同じくらいだ。なんなら、収入が低かった昔の方が幸福度が高いんじゃないじゃないかって思うくらい。

実際に「月収100万円達成しました!」とTwitterのタイムラインで華やかに報告をしている人でも、実はその裏で不満を感じている人も多い。実際にそういう相談をしてきた人もいた。

ではなぜそうなるのか。シンプルだが、それは2つの理由があるからだと考えられる。

1つ目は自分の労働がめちゃくちゃ増えること。そして2つ目が、稼げば稼ぐだけ失う恐怖が芽生える、ということだ。

まず一つ目だが、ライターで稼ごうと思えば、労働量はめちゃくちゃ増える。

ライターという仕事のビジネスモデルはシンプルで「単価×数量」で決まる。

つまり理論上、より高い単価の仕事をたくさん仕事を受ければ受けるだけ、ライターであるあなたの収入は増えるのだ。

現実、多くの「稼いでいる」とされているライターは、毎日クライアントからの仕事でパンパンだ。常に納期に追われ、原稿のためにプライベートを捨てて命をかけてパソコンをタイピングしている。

もちろん、それが楽しいという人もいる。僕もどちらかというと、そういう状況がとても心地よいタイプの人間だったから「仕事で忙しい」という状態は幸福度を下げる要因にはならなかった。

しかし、人によってはその仕事量が膨大なストレスになる。

在宅でのんびりと仕事をするためにライターになったのに、気がつけば月に何十本もの依頼を受け、血眼になってライティングをする日々を過ごしている、というような人なら、おそらくそれは幸福だとは言えない。

そして2つ目が、稼げば稼ぐだけ失う恐怖が芽生えるということ。

僕は元々証券会社でマーケティングをやっていたのだが、そこで先輩に教えられたことがある。それが、資産運用は「攻めるフェーズ」と「守るフェーズ」の2つがあるということだった。

資産が少ない時は、リスクの高い投資対象も入れながら、攻めのスタイルで資産を増やしていく。しかし、ある程度資産が増えた時は、攻めだけでなくリスクを減らして守りを考える必要がある。なぜなら、大きなな資産を得たということは、同時に大きな資産が減る可能性があるからだ。

この理論はライターのクライアントワークでも同じだと考えている。駆け出しのライターは失うものがない。大きな売り上げを抱えているわけでもなければ、重要なクライアントを何人も抱えているわけではない。なので、失敗など考えず、伸び伸びと「攻めること」だけを考えればいいのだ。

僕も、なんだかんだで収入が低い時の幸福度は高かった。ライター1年目でまだ収入が20〜30万円の時、少ないお金で節約しながらも、タイやフィリピンで海外ノマドをしていた。当時は収入も低く、キャリアも十分ではなかったけれど、それでも幸福度は高かった。なぜかというと「プライベートの充実感」はもちろん、失うものが何もなかったからだ。

しかし、ライターとしての知名度が上がり、クライアントからも信頼されて「売れっ子ライター」になってくると、攻めだけではなく守りも考えなければならなくなる。「いまいただいている仕事をどうやって継続するのか」「収入を落とさないようにどうすれば良いか」など。

人は損することが嫌いな生き物だ。なので、この前まで月収30万円を稼いで嬉しがっていても、月の収入が100万円とかになった瞬間、次は「元の月30万円に戻ること」が怖くなるのである。

僕も実際にそうだった。ライターで月60万円くらいを稼げるようになった時、じゃあ次は100万円を目指そう、というよりも、30〜40万円台に落ちたくないと考えていたのだ。

人は、何かを得れば得るだけ、相応の「得たものを失うことに対する恐怖」を抱くようになる。

なので、どれだけ稼げたとしても、おそらく安心はできない。月に100万円以上稼ぐライターたちも、きっと一切安心はしていないだろう。

ただでさえ変化の激しい世の中で、今もらっている100万円が今後も続くかどうかなんてわからない。

そうなると、大きな不安が自分に襲ってくる。

そして、自分がある程度稼げるようになると、周りで自分と同じように稼いでいる人たちが視界に入るようにもなる。

この前まで影に隠れていたような人が「ついに月収70万円を達成しました!」などと報告していると、「やべ、俺、いつかこの人に抜かれるんじゃね...」みたいな恐怖心に苛まれる。

周りの人が色んなことに挑戦してると、自分ももっと頑張らないと置いていかれるんじゃないかという恐怖を感じてしまうのだ。

するとどうなるかというと「頑張ること」から逃げられなくなってしまうのである。

もしもここで手を抜けば、自分の収入は落ちてしまうし、周りからも「あ、あの人消えたな」と思われてしまう。そうなると、金銭的にも社会的にも満たされなくなってしまうだろう。

だから中途半端に上まで行くと、もうそこから逃げられないのだ。

もちろん、向上心が高く、多少忙しくても良いからその先にある何かを手にしたい、という人は幸福度を落とすことなく突き進めるだろう。

しかし以上の理由から「稼げば気持ち的にも楽になって幸せになれる」と思っているのなら、それは違う可能性があるということだ。

将来幸せな人は、きっと今も幸せだ。そして今幸せではない人は、きっと将来も幸せではないのである。人はすぐには変われない。

じゃあ稼ぐことを辞めるべきなのかというと、決してそういうことではない。もちろん資本主義社会に生きている以上、お金はないよりあった方が良い。それに自分のレベルが上がれば付き合う人も変わるし、仕事の幅も広がる。

どっちにしても、それぞれに不安や喜びがある。だからこそ、僕たちは衰退しないように愚直に素直に、目の前の仕事を懸命にこなしてやっていくしかないのだ。

そしてあなたが思う以上に、今もあなたは幸せなんだよってことを伝えたい。

今のあなたは、おそらくこれからの人生の中で一番最強の状態だ。失うものが何もなく、攻めだけを考えれば良いのだから。

怖いものなんて、何もないだろう。

僕は「ライターは稼げば稼ぐほど幸福度が落ちる」という強めのタイトルを書いたが、自分の幸福度は誰かに決められるものではない。自分自身が決めるものであって、そこに正解や不正解はない。

こちらの記事もどうぞ!



おすすめの記事